お笑い担当の傍らで、一番大切にしていたのはクラシカルができる男役
──愛月さんは退団後のテレビ出演でも「品格を大事にしてきた」とコメントされていますよね。いわゆる“宝塚らしいクラシカルな品格”を備えたタカラジェンヌさんとしてファンの方を魅了してきたと思います。
愛月さん
クラシカルができる男役であることは、やはり一番大切に思ってきました。宝塚の良さというのは王道のクラシカルな部分ができることが第一前提だと思うので、それを常にできる男役でいることは自分の中で大切にしてきたことです。宙組にいた後半は、宝塚にしては少し奇抜な役を演じることが多かったんですけど、品なくやろうと思えばできてしまう分、“宝塚の男役が演じる”という芯の部分を失わないようにしようと決めていました。振り切って演じることは可能ですが、宝塚らしさだけは持ち続けようと。それは信念を持ってやっていたことですね。
愛月さん
例えば退団公演でやらせていただいた岡田敬二先生のロマンチック・レビュー『モアー・ダンディズム!』などは“男役の美学”が徹底して追求されている作品なので、やはり男役の技がしっかりできてないと難しいんです。下級生と私が任せていただいた軍服の場面(第4章 「ゴールデンデイズ」)は若央りさ先生の振り付けだったのですが、曲もゆったりだし、ノリノリで踊るわけではないので“空間”というか“空気”というか、それがなかなか埋まらないんですよね。説明するのは難しいですね(笑) 下級生たちはなかなか空間を使い切れず、見せ方でそれを埋められない、という印象です。若央先生も「愛ちゃんとか一列目、二列目の上級生たちみたいに埋め方を勉強しなさい」とおっしゃってくださったのですが、そのときは何と言って教えてあげたらいいのかも分からなくて……。でも、それができてこそ、宝塚の男役だと思うので、下級生たちには頑張ってほしいと思います。
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