今回のゲストは元宝塚歌劇団・宙組娘役トップスターの実咲凜音(みさきりおん)さん。個性的な役どころからノーブルで端正な正統派まで多彩に演じ分けられる実力派。現代的で、気取らない、とても気持ちの良い女性。内面からにじみ出る美しさを持つ実咲さんの魅力とは……?
実咲凜音さんの前回、前々回のインタビューはこちら▼
「目が“しじみ”みたいだよ」と言われた下級生時代
美夢ひまり(以下 美夢):みりおんとメイクの出会いは?
実咲凜音さん(以下 実咲さん):メイクをするようになったのは音楽学校の本科生の時からですよね。メイクのことなんて本当に何にも分かっていなかったからひどかったですよ、それは(笑)。
美夢:本科生になりたての時のメイクって本当にひどいよね(笑)。95期生はかなり洗練されたイメージがあるけど……それでもそうなんだね~。
実咲さん:同期は綺麗な人が多いんですけど……ぐちゃぐちゃでしたよね、当時は。そのまま劇団に上がって舞台メイクですからね。私忘れられないのが花組に配属されてからすぐの頃、舞台袖でスタンバイしている時に上級生の方から優しく「目が“しじみ”みたいだよ」って言われて。「“しじみ”みたい」ってすぐに何のことかわからなくて「はい、ありがとうございます!」と返したんですけど。後から“しじみ”を調べたら真っ黒のすごく小さな貝じゃないですか。同期に話したら「ありがとうございますじゃないよ!」って突っ込まれて(笑)。それから「今日のメイクはどうでしょうか?」って上級生の方にお聞きしに行って、アイメイクをイチから教えていただきました。
美夢:みりおんが在団中一番メイクをこだわった役は?
実咲さん:「双頭の鷲」の王妃役ですかね。演出の植田景子先生から「みりおんちゃん。陶器のような肌にしてほしいの」と言われ続けて、「陶器……!?」となりました(笑)。宝塚メイクのマニュアルからいったん離れて、ベースを薄くして陶器のようになれるように研究しました。主演の轟悠さんが彫刻のように美しいので、その方の隣に立たせていただくのだからこれは自分も美しくないといけないと思って肌の質感もそうですし、目の描き方なども昔の女優さんのポートレートを何枚も見て研究しましたね。
経験を重ねて学んだセルフプロデュース
美夢:みりおんは抜擢が早かったから、かなり下級生の頃から、ポートレートなどを撮る機会もあったよね?
実咲さん:最初は本当に何も分からなくて、見様見真似ですよね。自分の見せ方も全く分かっていなかったし、「自分をセルフプロデュースしないとだめよ」ってよく言われていたけど、その意味をあまり理解できていなかったですね。宝塚の編集部の方の提案してくださるものにいつものっかっている感じで。メイクに関しては、主演娘役に就任させていただいて、ポスターのメイクをCHIHARUさんにしていただいたときは本当に衝撃でしたね。使っているものから、アイシャドウの入れ方から何もかもが衝撃的でした。
美夢:やっぱりみんなCHIHARUさんに学んでいくのよね。
実咲さん:CHIHARUさんの影響はとても大きいですよ。トップになってからちゃぴ(愛希れいかさん)と2人で写真集を出させていただいたんですけど、その時にどうしようかたくさん話し合って。自分のページは「こういう感じで撮りたい」と初めて言うことができたし、色んな雑誌やポートレートを見て研究して創り上げました。経験を重ねて「セルフプロデュースってこういうことか」って気づきましたね。
美夢:でも今日の撮影を見ていて、ポージングや表情のバリエーションがすごく多くて「やっぱりすごいなー」って思ったよ。もともとセンスのある人なんだと思ってた。
実咲さん:いやいや、ポージングなんかも全く分からなくてちょっと角度を変えるくらいしか最初はできなかったです。でも相手役をさせていただいていた、りかさん(凰稀かなめさん)がものすごいセンスの良い方で。りかさんの撮影をいつも見学させていただいていたんですけど、1枚たりとも同じ写真がなくて「撮影って動くんだ!」って学びました。りかさんはご自分が良く見える角度とかもすべて計算していらして、近くで学べたのは本当に幸せでした。
凰稀かなめさんと朝夏まなとさんとの今
美夢:最近もお二人とは交流があったりするのかな?
実咲さん:凰稀かなめさんは、今年の2月、20周年記念ライブに出演させていただきました。現役の時って舞台を良くするために毎日お伺いをして、自分に何が足りないか、自分がどうあるべきかをたくさん教えていただいて……今考えたら普通の話なんて全くしなかったんですよね。なので退団してお仕事をご一緒させていただくとなったときに、ちゃんとお話しできるか少し緊張してしまったのですが、そんな心配は無用でした。このままの自分でお話しできて嬉しかったですし、りかさんに教えていただいたことは今も自分の中にすごく残っているので、久しぶりにお隣に立たせていただけて幸せでしたね。
美夢:まあくん(朝夏まなとさん)とは?
実咲さん:まあ様は、わりと頻繁に連絡を取らせていただいているんです。印象的だったのは退団してすぐにランチに行ったときにまあ様が「相手役って思わなかったら楽~!」とおっしゃったこと。やっぱりトップさんって、自分のことだけではなく組全体のことも相手役のことも背負ってくださっているから、より良いコンビになるために、より良い舞台にするためにありとあらゆるところに神経を使ってらっしゃるんですよね。そういうことを一切切り離して「人対人」で接したときに「楽~!」って(笑)。それこそ花組時代からご縁がある方なので、まあ様って私の良いところも悪いところも何でも全部知ってくださっていて、それこそ家族のような、同期よりも私のことを知っているかもしれないです。今でも何かあったときはまあ様に相談させていただきますね。
死ぬまでずっと舞台に立ちたい!
美夢:今後やりたいことは?
実咲さん:20年後も30年後も……死ぬまでずっと舞台に立っていたいなって思っています。それが最終的な目標。あと、今回こうやって美容のお話をさせていただけたのがすごく嬉しくて、資格も取ったのでそれを活かした美容に関わる仕事もしていきたいですし……まだまだあるんですけど、良いですか?
美夢:もちろん、お願いします(笑)。
実咲さん:最近趣味というかアクセサリーを作ることにはまっていて。現役時代はアクセサリーやかつらの飾りを作るのって……初日前に他にもやらなきゃいけないことがいっぱいある中で苦しみながらやっていたんですけど、退団してからやってみると気分転換になるんですよね。自分が可愛いと思うものを自分で作れるのはすごく楽しい。いつか、私が可愛いと思ったものを皆さんにお届けしたいです。
美夢:インスタにものせてたよね。
実咲さん:まだありますよ~。宝塚を退団して映像の仕事もさせていただくようになって、映像の仕事って舞台とは違う大変さがあって瞬発的な集中力が必要だなと思っているんですけど、難しさを感じる分楽しさも感じていて。その世界で何か皆さんの印象に残るような役や作品に出会いたいですね。まだ良いですか?(笑)。
美夢:全部お願いします!
実咲さん:宝塚の時って当たり前のように公演のDVDが出て、CDも出て、形として残っていくものがありました。外の世界だとそういう形で残ることって少ないし、1回1回の生の舞台で終わってしまうことが多いので、自分の歌声などを何かの形で残せたら良いなって思います。それがCDなのか何なのかは分りませんが、何か残したい。…と、やりたいことを言い出したら永遠に出てきちゃうんですが、共通して言えるのはファンの皆さんに喜んでいただきたいな、楽しんでもらいたいな、ずっと楽しんでもらえる自分で永遠にいたいなということです!
美夢:素敵だね。最後にファンの方へメッセージをお願いします。
実咲さん:コロナウイルスの影響でみんな気持ちが沈みがちだと思うんです。私も落ち込んだり、もっと頑張らないとって思うこともたくさんあります。だからこそ皆さんと一緒に楽しいことを探していきたいし、そういう部分でずっと変化していける人になりたいなと思っていますので、これからも見守って応援していただけたら嬉しいです!
【実咲凜音さん・プロフィール】
実咲凜音(Rion Misaki)
兵庫県出身。2009年宝塚歌劇団入団。宙組公演『薔薇に降る雨/Amour それは・・・』で初舞台、その後花組に配属。10年『麗しのサブリナ』新人公演でヒロインに抜擢。新人公演やバウホール公演で数多くヒロインを演じる。12年宙組トップ娘役に就任。在団中の主な出演作は、『TOP HAT』(デイル・トレモント役)、『王家に捧ぐ歌』(アイーダ役)、『エリザベート』(エリザベート役)など。17年『王妃の館/VIVA!!FESTA!』で宝塚歌劇団を退団。退団後はテレビ、ドラマ、舞台と幅広く活躍中。
実咲凜音プロデュースブランド「Misaki」
2020年10月29日デビュー!
ーーー今までの経験を生かし私自身が身に付けたいと思うものをデザインしました。 「Misaki」のアクセサリーを付けることによって皆さんが日々の生活の中で、少しでも気持ちが向上し輝きを放つことができたらと願っています。
「実咲凜音カレンダー2021~Challenge~」
2020年12月21日発売
定価:¥2800
撮影/金栄珠、取材・文/美夢ひまり
Edited by 三好 さやか
公開日: