「高額コスメって使う意味ある?論争」を改めて考えてみる
美容コラムニスト
近藤須雅子さん
諭吉コスメは本当に効く?
高価なプレステージコスメの話題になると、「ほんとに金額だけの値打ちがあるの?」「1万円のコスメは1000円の10倍効くの?」なんて展開になりがち。化粧品はクスリではないのだから、“効きめ”を問題にすること自体、ちょっとおかしいのだけど、そう言うと「結局、効かないってことよね」と、いきなり全否定になったり。1万円のディナーや20万円のブランドバッグにはそこまでカリカリしないのに、こと化粧品になると、なぜかムキになってしまう。
たとえば、高級なお酒の“値打ち”。素晴らしい味わいや酔い心地のよさ、豊かな香りや美しさにあるのであって、ほんの少量で酔えたり酔いが長く続くことじゃないはず。だから、「諭吉ワインだから、ひと口でがっつり酔えるよね」とは誰も言わないのだけれど、化粧品に対しては「諭吉クリームなんだから、少量を薄くのばしても効くはずよねっ」と、上から目線で言ってしまうのだ。
同じように、高級料亭と牛丼屋チェーンのすき焼きの素材(いずれも牛肉と醤油、砂糖が主)を見比べて、「まるっきり同じ料理」とは言わないのに、成分表示が似た化粧品だと「プチプラもブランドも同じ!」と断言しちゃったり。どうも化粧品には期待が大きすぎて、キレイにしてくれそう→キレイにしてくれないと困る→キレイにしないのは詐欺だ!と、エスカレートしてしまうようだ。可愛さ余って憎さ百倍、みたいな。
一流コスメは豪奢な芸術品
とはいえ、高級コスメは高級ワインや日本酒と同様、何百年、何千年も昔から、積み重ね培われてきた技術と美意識の頂点。先進研究や伝統技術が生むケア効果、うっとりするようなテクスチャー、繊細な香り、洗練された容器etc.多彩な要素が奏でる総合芸術とも言える。それを感情に走って、真価を見誤ってしまうなんて、あまりにもったいない。
もちろん、人によって好みも肌質も肌状態も違うのだから、「ベスコス受賞の高額コスメだけど、これのどこがいいの?」なんてこともあって当然。その一方で、いいものを使い慣れていないと、いいものを見分けられないというのも、また真実だ。和食初心者の外国人旅行者が、上等なお吸い物を「水っぽい」と嫌い、がっつりラーメンを絶賛するように(それはそれでいいけど)、経験や教養がないと真価が理解できないことも多い。
『芸能人格付けチェック』で、GACKT様が連勝記録を更新してきたのも経験と鍛錬を重ね耳や舌が肥えているから。自分の肌についても、それなりのキャリアがないと、微細な変化をキャッチできない。月単位で見れば、違いは一目瞭然なのに、「一昨日と全然変わらない~」なんて落胆してしまうことさえあるのだ。
うれしいことに、プレステージ化粧品の教養を深め経験を積むのに、辛い努力も鍛錬も不要。上品なテクスチャーや香りを味わい、絶妙なケア効果に親しむこと自体が、エレガントな審美眼を磨いてくれる。そのうえ、美しさが磨きがかかり、得も言われぬオーラまで。こんな素敵な修行、滅多にありませんよ。
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近藤さんが選ぶ“魔性”の4品
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