シャネル Nº5、ココ マドモアゼル、チャンスに、アリュール……。女性なら誰しも憧れる、シャネルのフレグランス。ただ、それらがなぜ、こうも「特別」であり続けているのか、じつはあまり、知られていないのではないか。そこで、今こそ紐解きたいのだ。類稀なる才能、花という奇跡、熟練の職人技。時間と手間をかけ、ようやく出来上がる、芸術……。2017年の誕生以来、早くもシャネルの「顔」のひとつになったガブリエル シャネルから探る、シャネルの香りが、唯一無二のオートクチュールといわれる理由。
ガブリエル シャネルに見る、『シンプル』の極み
ガブリエル シャネル オードゥ パルファム 50ml ¥13000、100ml ¥18500/シャネル
自由な女性らしさ、究極の女性らしさを表現し、ガブリエル自身の名を冠した香り。白い花々の眩い光が肌の上で輝くように香り立つ。2017年の発売以来、人気を誇っている。
POINT 01 「繊細さ」をとことん極めたガラス
「ラグジュアリー=重厚感」という今までの概念を覆す、まったく逆のアプローチを実現。
POINT 02 ラベルに向かうストレートなライン
正面の、4つの角からラベルに向かうストレートなラインが、ボトルに豊かな表情を生み、女性らしさを演出。
POINT 03 「マルロケット」が削り取られた美しさ
通常、ボトルの内底に見られるわずかにカーブした厚みは外に押し出され、丁寧に削り取られたという。
POINT 04 キャップと同形のスクウェアのラベル
ボトル中央のスクウェアのラベルは、キャップと同じ形、同じ大きさ。それもまた、完璧さを作っている要素。
POINT 05 オートクチュールから着想を得た輝き
さらにこのボトルは、ジャケットの裏地を彷彿とさせる特別な加工が施されたライナーに、大切に収められている。
香りと呼応するボトルのラグジュアリー
ガブリエル シャネルをボックスから取り出すと、まず驚かされるのは、ボトルの美しさだろう。それまでのシャネルの香りがそうだったように、どこまでもシンプリシティを極めたシルエットに、はっとさせられるに違いないのだ。
ボトル、ラベル、キャップとスクウェアのリフレイン。ボトル正面の4つのコーナーから中央のラベルへ向かって象られたストレートなライン。すべての面が光を最大限に反射するよう緻密に計算し尽くされた完璧さ。しかも、一瞬触れるのを躊躇うほどの、これまでにない繊細なガラスでできたボトルには、通常、内底に見られる、「マルロケット」と呼ばれる厚みがない。ボヘミアンガラスの工房で丁寧に削り取られたガラスと、中に収められたフレグランスとの境目が溶け込み、両方の輝きが呼応して、どこまでも眩い光が放たれる。数々の技巧が施され、開発に数年を要したというこのボトルは、まさに、ガブリエル シャネルという香りの輝きを最大限に体現するためのものなのである。
ちなみに、ラベルにもキャップにもボックスにも共通して用いられ、ゴールドともシルバーとも取れる繊細で上質な輝きを湛えたカラーは、メゾンに保管されているオートクチュールの生地から着想を得たものだという。これぞ、真のラグジュアリー。手にした人だけが本能で感じ取ることができる、芸術……。
オリヴィエ・ポルジュが語る、香りの『オートクチュール』
シャネル 専属調香師
オリヴィエ ポルジュ
父であるジャック ポルジュ氏から受け継ぎ、2015年から4代目専属調香師に。ガブリエル シャネルを始め、シャネル Nº5 ロー、チャンス オーヴィーヴなど、タイムレスな中に時代の息吹を感じる香りをクリエイト。
シャネルというエスプリと、時代を捉えた「何か」と
ガブリエル シャネルの生みの親。シャネルの専属調香師を、しかも父から受け継いだ4代目調香師、オリヴィエ ポルジュ氏は語る。
「私にとって特別なシャネルというメゾンで調香師を務められることをとても幸せだと感じています。ココシャネルが素晴らしいと思うのは、ファッションとフレグランスを延長線上にあると考え、それらに同じエスプリをもたらしたこと。彼女自身が香りの専門家ではなかったからこそ、彼女はすべてに対してプロフェッショナルを起用したし、その結果、すべてを自社でクリエイトし、コントロールできたのではないでしょうか。シャネル
Nº5の誕生以来、およそ100年も香水を創り続けているのに、調香師はまだ4代目。じっくりと時間をかけて、もの創りができるから、哲学も経験も、前任者から脈々と受け継がれていく……。ぶれずに継続していくひとつのものがあるのはそのためだと思います」
ガブリエル シャネルという香りが生まれた背景には、さまざまな「職人」がいる。完璧なボトルデザインの裏にも、もちろん、畑や工場にも。「『花』から『ボトル』までが香り創りであると私たちは考えています。そのすべてのオーガナイゼーションが、調香師のチョイスから始まっていると思うんですね。シャネルというメゾンのエスプリを感じるものでなくてはいけない。でも、懐古的であってはいけない。そこに、その時代、その時代の『何か』を捉えたものでなくてはいけない。つねにそう、心がけています」
職人たちという「オーケストラ」の演奏をクリエイトする「作曲家」であり、コントロールする「指揮者」であり。「唯一無二の最高」を生むのは、調香師。
「例えば、チュベローズ。確かにチュベローズは、非常に濃厚で官能的な花ではありますが、どう香らせるかには無限の可能性がある。調香師のセンスや技の見せどころだと思うんです。私の場合は、爽やかなものと組み合わせたり、濃度を希釈したりと、まったく同じ方向に行かないように、バランスを操っています」
ガブリエル シャネルは、こうして誕生した「オートクチュール」。それをさらに特別なものへと昇華させるのは、纏う私たちなのかもしれない。
「ファッションとフレグランスに同じエスプリをもたらしたシャネルだからこそ、あえて、香りは、究極の表現方法だと伝えたい。選ぶ洋服も、それを着たときの立ち居振る舞いも、すべてはパーソナリティにつながるでしょう? 香りも同じで、自分の一部を語り出しているんだと思うんです。もっともっと、香りで自身を表現してほしいと思います」
写真提供/シャネル
Edited by 松本 千登世
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