お話を伺ったのは……
早坂信哉先生
医学博士。東京都市大学人間科学部教授。一般財団法人日本健康開発財団 温泉医科学研究所所長。温泉療法専門医として、温泉・入浴と健康の関係を研究するとともに、入浴などを通じた健康づくりなども提唱。著書に『最高の入浴法』(大和書房)などがある。
湯船に浸かるだけで得られる3大効果とは?
日本人は世界的に見ても「お風呂好き」と言われています。それでも、最近は、仕事に追われて、あるいは、一人暮らしでお風呂に水をためるのが面倒などの理由から、湯船には浸からずにシャワーですますという人が増えてきています。
体の汚れを落とすという洗浄目的だけであれば、シャワーですませても何の問題もありません。けれども、バスタイムには、洗浄以外にも、さまざまな美容・健康効果が期待できます。その主な作用が、「温熱効果」「水圧」「浮力」です。しかも、これらの3つの作用のほとんどが、しっかり湯船に浸かってこそ得られる効果なのです。
温熱効果は、入浴の最大の魅力!
なかでも、入浴がもたらす温熱効果は、美容や健康面で最大のメリットと言えます。
体を芯から温めることができるため、寒くなるこれからの季節に気になる冷え対策として最適です。また、血流が悪くなることで起こるくすみ対策としても効果的。でも、それだけではありません。入浴による温熱は、さらなる大きな美肌効果ももたらしてくれるのです。
「体が温まることで、血管が広がり、血液の流れがよくなります。人の体は約37兆個の細胞でできていますが、その細胞に、必要な酸素や栄養を運んでいるのが血液です。例えば、肌の表皮の奥にある基底層では、細胞分裂をすることで新しい肌細胞が生み出されています。血流がよくなれば、このターンオーバー(細胞の生まれ変わり)が促され、バリア機能の高い若々しい肌状態を保つことができるようになります」と、温泉療法専門医の早坂信哉先生。
肌の奥の真皮でも、血流アップによる美肌効果は得られます。
「真皮にあるコラーゲンが肌にハリや弾力をもたらしていますが、このコラーゲンの原料となるのはアミノ酸です。食事で摂取したアミノ酸は分解されて血液によって運ばれ、真皮の線維芽細胞でコラーゲンへと合成されます。そのため、血流がよくなってコラーゲンの合成が促されれば、肌のハリも高まるのです」(早坂先生)
もちろん、健やかな体をキープするうえでも血流アップは重要です。
「疲労物質が体内に溜まると、疲労感や肩こりなどを感じるようになります。でも、入浴によって血流がアップすれば、疲労物質を流し去ることができます。体内に蓄積されるのを防ぐことができるため、疲労回復や肩こりなどの解消もできます。また、温めることで痛みが軽減されるので、筋肉痛や、肩こりによる痛みの解消にも有効です」(早坂先生)
シャワーだけで体を芯まで温めることはなかなか難しいですが、湯船に浸かれば短時間でも高い温熱効果が得られます。その手軽かつ絶大なパワーで、肌も体も若々しく健康的な状態をキープすることができるのです。
水圧と浮力の作用で、さらなる健康効果を
湯船に浸かるからこそ得られる水圧や浮力にも、女性に嬉しい健康効果があります。
お風呂の水圧は、多くの女性が気になるむくみ対策に効果を発揮。
「水圧の締め付け効果によって、リンパの流れがよくなり、むくみが軽減されます。特に下半身は、入浴時に一番深い部分に位置し、水圧がかかりやすいため、足のむくみの解消に有効です」(早坂先生)
また、浮力は心地よいリラックス効果をもたらしてくれます。
「湯船に浸かると、体重は普段の10分の1くらいになります。体を支えている筋肉などへの負担が軽減されるので、体がリラックスできます」(早坂先生)
夜に湯船に浸かれば、1日の疲れを取り除くだけでなく、上質の睡眠へと誘うことができるので、上質の睡眠がもたらす美容効果も手にすることができます。
入浴は、湯船に浸かる――ただそれだけのことで、ハリのある美肌はもちろん、引き締まったレッグラインや癒し効果まで手に入れることができる、効率的でお手軽なホームエステの時間です。活用しないなんてもったいなさすぎ。これを機に、湯船に浸かる習慣を身につけて、ラクに美と健康を手に入れてみませんか。
Edited by 串田 昌子
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